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青 春

お一人で遠いところに旅立たれた先生。
総てが燃え尽きてしまうような暑い夏の日でした。
『青春』を先生にさゝげます。

 食事もおいしくないけだるい夏の夜、『悲しいお知らせです』で始まる訃報がパソコンに届いた。
 思いもしないことだった。生命あるもの総てが体験する事とはいえ、あまりにも早すぎたのではなかったか。
 比較的無口で、表情を変えることも少なく、たまに面白い言葉を口にして私達の作品に華をそえてくださる。そんな先生だった。
 二ヶ月に一度、四時間程度の教えを受ける。先生にお目にかかったのは二十回に満たない。
 何かを書くという事。その内容を思い起こす時、そこには当然反省もあり、私には良い修行だった。
 思い返し、文字に現し、それを文章として連ねたとき、血が通いだし生き生きとしてくる。そんな文章が果たしてどれだけ書けたのか。
 自分で気に入った文章が書けずに悩んだり、読書力の足りなさを痛感したり、この苦しみは今も続いているし、書きたいと思う限り永久につづくのだろう。
 苦しみ、悩む事はまさに私の青春であり、そう思うことで気持ちを外にむける。他の人が読んでくれて、どこかに魅力を感じてくれるものを求めて彷徨う。

 いつか先生にお会いした時、「これが間にあわなくて、先生に読んでいただけなかった作品です」といって読んでいただけるものが一作だけほしい。
 きっと先生は表情をかえずにお読みになり、目だけでかすかににっこりなさるだろう。
 先生のご冥福を祈りながら、いただいたお教えを思い出しながら、私の青春はこれからも続く。 

林 美江

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